嘉門内科クリニック
輪島市
輪島市で内科を中心に診療を行う嘉門内科クリニック。能登半島地震により院内設備の多くが被害を受け、通常診療の再開はまだこれからというタイミングで、9月21日に発生した奥能登豪雨により再び被災しました。クリニックは「半壊」判定となる中で、少しずつ診療できる状態に戻すことに尽力されている院長の嘉門先生に、豪雨時当時の状況をお伺いしました。
嘉門 信雄(かもん のぶお)
嘉門内科クリニック
4000年に1回有るか無いかの地震
1000年に1回有るか無いかの豪雨
両方を同じ年に同じ場所で被る確率は。。。
・金沢の自宅で天気予報をフォローしておりました。雨雲の流れが次々と能登に向かい、線状を形成するのが分かりました。震災復興もままならないのに、水害が発生しなければ良いのだがと案じておりました。
残念ながら予想をはるかに上回る豪雨被害となりました。
・当院は河川から遠くに位置し過去にその氾濫被災歴が無く、建物周囲には排水路が整備され大雨でもせいぜいはみ出す程度。
でも、今回は違いました。高台の輪島中学校グラウンド崩落で大規模土石流が裏道づたいに発生。その被害でした。クリニック建物周囲360度が完全に土砂で埋め尽くされる未曾有の惨状。隣家や県道にも同様の景色が拡がりました。
・後に知ったことですが、1月1日の大地震により既に同グラウンドには深い割れ目ができグランドキャニオンみたいな姿に。修復計画模索中この豪雨をむかえてしまったというのです。土砂くずれがすでに大小4回も起こり、付近の住人から人災だとかクレイムが出ていた最中だったとも聞きました。
・5回目なのに。。。管理者である輪島市からは何ら事前情報提供もなく、こちらとしては何の対処もできないまま土砂災害に見舞われる羽目に。
撮影日:9月24日 大量の土砂で埋まったコンテナや乗用車 ボイラーとエアコン室外機は埋没して見ることすらできない
1.インフラ被害が甚大でした。
撮影日:9月29日 コンテナ内に侵入した大量の土砂の掻き出し作業
左手のコンテナ外部に高さ1メートルを超える土砂が見える
撮影日:9月24日 クリニック側面 エアコン室外機心臓部が埋まっている
FFファンヒーターの吸気口排気口から土砂が侵入 建物本体外壁にも傷跡が見える
撮影日:9月24日 左手のクリニック正面玄関も右手の駐車場全域も大量の土砂で埋没しているのが見える
撮影日:12月5日 復旧作業ながら未だおぼつかない
東京から東京都医師会西田理事先生ご一行様、県から石川県医師会会長先生ご一行様等々の慰問を受けました。手に手にスコップや掃除具で土石の搬出や掃除やコンテナの壊れたドアの処置などなど、をしてくださいました。
ボランティアの皆様には今回も大変お世話になりました。土砂除去作業など何度もしていただけました。
撮影日:9月29日 十数人の医師会の方々 土砂に埋まったコンテナや重機も見える

嘉門内科クリニック
1000年に1回有るか無いかの豪雨
両方を同じ年に同じ場所で被る確率は。。。
─豪雨の発生当時のことについて教えてください。
残念ながら予想をはるかに上回る豪雨被害となりました。
でも、今回は違いました。高台の輪島中学校グラウンド崩落で大規模土石流が裏道づたいに発生。その被害でした。クリニック建物周囲360度が完全に土砂で埋め尽くされる未曾有の惨状。隣家や県道にも同様の景色が拡がりました。

─クリニックの被災状況はどのようなものでしたか?
床上浸水でした。「半壊」の判定をいただきました。1.インフラ被害が甚大でした。
- ・エアコンの室外機8台が水没し、廃棄
- ・FFファンヒーター3台が吸気口排気口に土砂が入り、廃棄
- ・ボイラー1台が内部に土砂が入り、廃棄
- ・コンテナ1台が土砂が入り壁も変形し、廃棄
- ・乗用車1台がエンジンルームやキャビンに土砂が入り、廃棄
-
電気ショートで全館停電に。医療用冷蔵庫内のワクチン、医薬品も廃棄。その余の冷蔵庫内も食料品など腐敗し廃棄に。

左手のコンテナ外部に高さ1メートルを超える土砂が見える

FFファンヒーターの吸気口排気口から土砂が侵入 建物本体外壁にも傷跡が見える


─医院の復旧段階で困ったことや大変だったことはありますか?
インフラの多大な損害だけではありません。- 1.書類 多くの重要書類を喪失、廃棄。カルテや会計資料なども。部分的に泥のかかった残りの書類もなるべく元通りにと多くの時間を割いたものの、結局徒労でした。
- 2.異臭 土砂は床上のはほぼ取り除けたとはいえ、床下のは手の届かない位置に侵入。そのためか異臭が途絶えることがありません。
- 3.診療 暫定診療すらしばらく再開できませんでした。
─一方で、復旧していく中で、助かったことやありがたかったことはありますか?
早々に医師会の方々に助けていただきました。とても感謝しております。東京から東京都医師会西田理事先生ご一行様、県から石川県医師会会長先生ご一行様等々の慰問を受けました。手に手にスコップや掃除具で土石の搬出や掃除やコンテナの壊れたドアの処置などなど、をしてくださいました。
ボランティアの皆様には今回も大変お世話になりました。土砂除去作業など何度もしていただけました。

─防災・減災という観点での気づきはありましたか?
1.災害の大小?-
地震災害は大災害であることに変わりはありませんが、豪雨災害も決して小さい災害ではないことに気づきました。グラウンド崩落がらみとはいえ、インフラ被害などは水害の方がより深刻。書類などの廃棄も地震ではほぼなかったものです。異臭の害も地震ではここまではなかったです。
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水害から設備を守るには高所設置が望ましいことに気づきました。そのため、エアコン、ボイラー、外部コンセント工事を新規発注するにあたり、取付位置は1メートル20センチ以上の高さにと指定した次第です。
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ドアには何らかの浸水防止装置を設置する必要があることに気づきました。
─豪雨の被災経験を踏まえて、全国の医療従事者の方向けにメッセージはありますか?
1.開院の立地条件-
川の近くや高台の下方はなるべく避けることをお勧めします。
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なるべくかさ上げして建てる。エアコン、ボイラー、外部コンセントは高い位置に取付け、ドアには防水装置設置が必須と考えます。
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事前の確認は必要ですが、これ自体状況により内容が実質変化していると思うべきです。ましてや、大地震の後は大幅に変化したと考えるべきです。
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近所の人や周囲の施設などとこまめに情報交換する精神が大切です。