性犯罪は卑劣で憎むべき犯罪です。犯罪被害者の中でも、とりわけ性犯罪の被害者は事後のトラウマ（心的外傷）が他の犯罪に比べはるかに強く、長く続くのが通例であります。何の罪もないひとりの女性の人生がある日を境に一変し、大きなトラウマを背負ってその後の人生を歩まざるをえない被害者の苦しみは想像を絶するものがあります。
　性犯罪は概して夜間に、特に深夜時間帯に多く発生しがちな犯罪です。したがって、事件発生時に被害者の身体的被害の程度を迅速に診断するための医療機関の受診が時間外、深夜になることが多くなります。このことは、警察の方々にとっても、医療機関にとってもかなりの負担を強いることになりがちです。また、通常の疾病の診察とは異なり、性犯罪被害者の診察には一定の手順や特別な配慮が必要になります。これまで産婦人科医はこのような診察の手順や対応に不慣れな面があったことは否めませんでした。
　性犯罪が多発し、複雑化するのを目の当たりにし、悲惨な性犯罪被害者を心身両面からバックアップする体制を整える必要性を我々は県警の方々ともども痛感しており、かねてから性犯罪の発生時に迅速かつ正確に対応し被害者を守るシステムの構築を目指しておりました。
　そして関係各位の努力が実を結び、平成13年10月25日に、「石川県性犯罪捜査協力産婦人科医会」を設立することができました。
　これを契機に平成14年6月からは毎年、「石川県性犯罪捜査協力産婦人科医会・研修会ならびに懇親会」を開催し、医会会員と県警察本部刑事部長をはじめとする刑事部捜査第一課（性犯罪捜査担当）が共に学び、意思の疎通、連携、協働を進めています。早いもので、今年（平成19年）で、この研修会ならびに懇親会は第6回目（6月26日に開催）を数え、県警の方々と医会会員が一体となって研修、懇親の輪を広げることができました。この様な警察の方々と産婦人科医とが一体となって性犯罪に取り組むシステムは全国的にみても例がないのではないかと自負しております。
　今後も石川県性犯罪捜査協力産婦人科医療機関の皆様の更なるご協力、お力添えを得て、石川県民を性犯罪から守る強い決意を県警の方々ともども新たにしているところであります。
　皆様方のなお一層のご支援をお願いしてご挨拶とさせていただきます。