第U期MR(麻しん・風しん混合)ワクチンについて

 1才を過ぎた時に単独、あるいは混合の麻しん・風しんワクチンを接種したので充分と思われるかもしれません。でもこの2回目のワクチンが大変重要なワクチンなのです。
 他のワクチンについて考えて見ましょう。たとえばDPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンは、生後3か月になったら3〜8週間隔で3回接種します。そして、6か月以上あけてもう一回。さらに11才になったらDT(百日咳を抜いた2種混合)を追加します。生ワクチンであるポリオも、生後3か月以後に、6週間以上の間隔をあけて2回投与します。感染を予防するための免疫(抵抗力)を付けるには、充分な量のワクチン接種が必要です。
 自然感染を防ぐためにワクチンが作られている病気は、合併症もなく元気に治ってしまうこともありますが、時に命にかかわるほどの重症になることもあります。「元気に治ってしまうことがあるなら、自然にかかった方が強い抵抗力が付くから、その方がいいなー。痛いワクチンを何回も接種しなくてすむよ。」と考える人がいるかもしれません。でもちょっと待ってください。むかしむかし「天然痘(てんねんとう)」という伝染病がありました。かかるとたくさんの人が死ぬ病気でした。牛にも人間の「天然痘」に似た病気があったのですが、たまたま牛の「天然痘」にかかった人は、人間の「天然痘」にかからないということがわかりました。こうして、「天然痘」のワクチンが作られ、世界の人々に接種され、地球上から「天然痘」がなくなりました。自然に「天然痘」に感染して、命が助かった人も多かったでしょう。でもどれだけ危険を伴っていたかわかりません。ワクチンの素晴らしさは、危険が少なくて抵抗力を付けられることです。
 麻しんという病気は、むかし「命定め(いのちさだめ)」と言われました。麻しんにかかったら、命がどうなるかわからないということです。それだけ怖い病気でした。現在でも、地球上の栄養状態の悪い後進国では、麻しんで多くの子ども達の命が失われています。麻しんの合併症である脳炎は、500人に1人が起こすと言われます。麻しんワクチン接種でも、百万人に0.3人が脳炎を起こします。ですからワクチンが絶対安全とは言えませんが、副作用の出る割合が6千分の一なのです。すべてのワクチンに、副作用の危険性はありますが、自然にかかるよりも格段に少ないということが大事です。さらに、麻しん・風しん共に、1才に1回接種しただけでは、年月がたつにつれて免疫が落ちてくることが分かってきました。最近、高校生や大学生の麻しん流行や風しんワクチン済みの母親から生まれる「先天性風疹症候群」が問題になっていますが、そのためなのです。
 入学前の第U期MRワクチンは、高校生や大学生・成人になっても免疫が持続するための大事なワクチンです。入学まで(3月31日まで)に必ず接種しましょう。4月になると有料になります。
1994
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