食中毒

 夏は食中毒の発生しやすい季節です。その理由は、夏の高温多湿のため細菌が繁殖しやすくなることや、ナマモノを食べたり、生水を飲む機会が多くなること、そして夏バテや夏カゼなどで体力のおとろえや細菌に対する抵抗力がおちることなどです。

 食中毒の原因を大きく分けると、毒素型と感染型とに分けられます。毒素型は、黄色ブドウ球菌が造る毒素によるものや、キノコ、カビの毒素によるものです。感染型は、ナマの魚介類、生肉などに付着した細菌が経口摂取後、体内で感染を起して発生するもので、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、ボツリヌス菌などが原因となることが多いようです。海外旅行先で感染するコレラやチフス、赤痢などは法定伝染病として扱われています。

 感染型で最近話題になっているのは、病原性大腸菌O157による食中毒です。この菌は昭和59年アメリカでハンバーガーを原因とする集団食中毒で初めて患者の糞便から発見されたものです。日本では平成元年埼玉県浦和市の幼稚園で死者2名を含む251名に及ぶ集団発生があり、それ以降注意を要する食中毒菌として注目されています。潜伏期間が4〜8日と他の食中毒と比べて長いため、原因の究明が難しいのも特徴です。平成8年6月岡山県で発生した学校給食が原因とみられるO157による集団食中毒は死者2名を出し、全国各地に広がりを見せています。

 O157による食中毒の症状は、初めは腹痛を伴う粘液成分の少ない水溶性下痢ですが、発病後1〜2日で真っ赤な血が混じり、便の成分をほとんど認めない血性下痢になります。5歳以下の乳幼児や、持病のある老人では重症に至る例があり、感染者の約5%に赤血球が破壊される溶血性貧血や腎機能低下による尿毒症となり、血小板破壊による出血がおき、しばしば痙攣を伴い死にいたることもあります。

 O157は他の食中毒菌と同様熱に弱く、75度以上で1分間以上の加熱で菌は死にます。また、ほとんどの消毒剤でも菌は死滅するようです。いたずらに不安がらずに十分注意して予防することが大切です。

 食中毒の予防策としては、手を十分洗う。食品を十分加熱する。包丁、まな板など調理用具を流水で十分洗う。井戸水や受水槽の衛生管理を行うことなどが必要です。特に梅雨から夏にかけて調理後日数がたった食品や、加熱されていない食品などは大腸菌に限らず、食中毒の危険があるので避けましょう。

 もし、腹痛や下痢などの食中毒症状が現れたら、直ちにかかりつけの医療機関を受診し、適切な検査や、治療を受けるようにしましょう。

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