第39回石川県医師会創立記念祭

会長 祝辞

     本日、ここに平成20年度(第39回)石川県医師会創立記念祭を開催するにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

     昨年は明治40年7月の創立以来、100周年という大きな節目を迎え、県民から附託されました崇高な責務を果たすとともに、誰もが安心して良質な医療が受けられるよう皆様方とともに、新たな歩みを始めることをお誓い申し上げたところであります。この間、歴代会長を始め、役員の諸先生方、会員の皆様のご尽力とご指導を賜りましたことに対し心より感謝を申し上げる次第であります。

     本日は、大変お忙しい中を森元内閣総理大臣、岩砂日本医師会副会長、谷本石川県知事、北村衆議院議員、岡田・西島参議院議員、宮下県議会厚生環境委員長を始め、多くのご来賓の方々にご臨席を賜りました。心から感謝を申し上げます。

     式典におきましては、永年地域医療に貢献された会員及び長期医療従事者に対する表彰、並びに叙勲受章者、長寿会員、長期在任役員・代議員の方々にお祝いを申し上げる事としております。各位のご功績に対しまして、心から敬意と謝意を表するものであります。

     また、本年も5名の会員が、医療功労者として知事表彰を受賞される事になりました。谷本知事には改めて厚く御礼申し上げます。

     近年、国内外で自然災害が大変多く発生しております。6月14日に発生した、岩手・宮城内陸地震におきまして、お亡くなりになられた方々に対するご冥福をお祈り申し上げ、また7月24日に発生した岩手北部地震もあわせて、多数の負傷者、被災された方々に対しましてお見舞いを申し上げますとともに、今なお行方不明の方々の早期発見を心より願っております。そして一日も早い復興をご祈念申し上げます。

     本年は役員改選の年であり、会員の皆様方のご推挙を頂き、会長として2期目を迎えさせて頂きました。更なるご支援、ご指導を賜りますことをお願い申し上げる次第であります。

     日本医師会においても、第118回定例代議員会において、2期目となる唐澤会長以下の新執行部が誕生いたしました。唐澤会長及び本日ご出席頂いております岩砂副会長並びに各役員のご就任を心よりお慶び申し上げますとともに、国民の健康を守る医療制度の維持向上に一層のご尽力を賜りますことをお願い申し上げます。

     さて、医療を取り巻く環境は極めて厳しいものがあります。財政偏重の医療費削減を目的とする、国民不在の医療制度改革と市場原理の導入によって、世界に冠たる国民皆保険制度が崩壊の危機に瀕し、医療現場の疲弊は限界に達した感があります。国民の間では受ける医療の格差が拡大することへの不安が高まってきており、どこでも誰もが安心して医療を受けることができる医療環境の整備が喫緊の課題となっております。

     平成20年度の診療報酬改定では、本体については勤務医、産科、小児科及び救急医療対策に重点的に充てるとし、0.38%とわずかではありますが8年ぶりのプラス改定となったところであります。

     しかしながら、診療報酬全体では相変らずの引き下げであり、6月27日に閣議決定された「骨太の方針2008」においても、医師不足対策として大学医学部の定員の増員などに、一部前進が見られるものの、依然として社会保障費についても最大限の削減を行うこととなっております。

     こうした財政主導型から脱却できない現状を続ければ国民の負担増と医療の質の低下を招くなど、地域医療の崩壊が危惧されるところであり、石川県医師会と致しましては、国民の健康を守る立場から、安定した医療財源の確保に最大限の努力を傾注していく所存であり、先般、社会保障費の自然増2200億円のシーリングの廃止について、地元選出国会議員の先生方にも強くお願いをしたところであります。

     日本の医療の現状は、OECD(経済協力開発機構)ヘルスデータ2007によれば、人口当たりの医師数は30カ国中27位、医療費は30カ国中19位であり、先進7カ国では最低であり、国際的に見て極めて低い水準にあります。

     こうした医療費の抑制に加え、研修医の都市部への集中、勤務医の過重労働、看護基準の改正などにより、医師・看護師の不足、偏在化が急激に進行しており、ゆとりのある心温まる医療の崩壊が現実のものとなっております。

     また、療養病床については、患者の十分な受け入れ体制が整備されないまま、大幅な削減が計画され、後期高齢者医療制度では高齢者に高負担を強いるなど、国民不在の一方的な手法に対し国民の不信感が高まっているところであります。

     こうした状況の中で、石川県医師会と致しましては、県民の安心と健康を守るために、今後とも医療費抑制政策に厳しく対峙するとともに、問題・課題に一つ一つ丁寧に対応し、一つでも多く明るい展望を示さなければならないと考えております。

     このため本年度は、新たに医療に関する安全、危機管理への対応を強化するため、「医療安全対策委員会」を設置したほか、医学生から勤務医までの対策を強化するため、「医学部学生生涯教育推進員会」を設置するとともに、医師会会員が講師となって金沢大学の医学生を対象に、医療に関する講義を行っているところであります。

     また、本年3月に「勤務医基本問題検討委員会」、「女性医師検討委員会」及び「医師会の在り方に関する検討委員会」からの答申を踏まえ、具体的な施策を進めることとしております。

     特定健診・特定保健指導につきましては、従来からの住民検診の枠組みから一歩たりとも後退することのないように地域医師会、各保険者、市町との取り組みを支援して行きます。

     県民の方々が日頃医療に対して持っている思いをお聞きし、語り合うことを通して、より一層県民、患者の視点に立った医療を推進するため、公募したモニターによる「メディバタ会議」を引き続き開催することとしております。さらに県民と共にという視点から始めました「健康について、みんなで語ろう会」も本年で6回目を数えます。

     医療倫理の確立や医療安全の取り組みにつきましては、法に則り適正に対処することは当然であり、医の倫理の高揚に、より一層努めていくこととしております。

     このほか、地域医療、救急医療、看護職員対策等に、国や県などの行政や、大学など関係機関との連携を図りながら、積極的に取り組むこととしております。

     石川県医師会では、医療関係団体等からなる石川県医療推進協議会などとともに、県民の「いのちを守る」をテーマにキャンペーン等、各種の事業を展開しているところでありますが、そのシンボルとしてデザインした「いのちのリボン」を新たに徽章として制作したところであり、本日も役員全員が胸につけております。日々の診療や活動を通して、県民のいのちを守るために行動することを、県民に約束するあかしとするためのものであります。

     最後になりましたが、医療現場における医薬品や医療器具に関わる医療事故等が報じられておりますが、会員の皆様におかれましては、厳しい医療環境の中ではありますが、県民の健康を守るため、高い使命感のもと、県民の目線で安全な医療の提供に努められますようお願いを申し上げますとともに、本日表彰されます会員、医療従事者各位並びにご来賓の方々のご健康とご多幸、益々のご活躍をご祈念申し上げまして式辞と致します。

    平成20年7月27日

    石川県医師会 会長 小森 貴

被表彰者

    会員の部

    医療従事者表彰の部(346名)

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