県民の皆様に

トピックス

献血で糖尿病予防・献血で健康管理

福井県赤十字血液センター 所長 豊岡 重剛 (糖尿病学会専門医 輸血学会認定医)

グリコアルブミン 検査とHbA1c検査

 血液中の糖とヘモグロビンが血液中で徐々に結合したものがヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)と言い糖尿病の診断や血糖のコントロールの良し悪しを見るために使われています。一方血液中のアルブミンというたんぱく質が糖と血液中で徐々に結合したものをグリコアルブミン(GA)と言います。HbA1cは約1〜2か月間の血糖を反映するのに比較しGAは約2週間の血糖を反映します。HbA1c 値は貧血などの影響を受けます。GA値は肝硬変などの血液中のたんぱく質が変動する病気の時に影響を受けます。特に併発する病気の無い場合 [GA値=HbA1c値(JDS)×3] と言われています。


グリコアルブミン 検査(GA検査)の適用範囲が拡大してきています

 GA検査は、一般的な糖尿病関連検査のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と同様一定期間高血糖が続くと数値が高くなる検査です。

 糖尿病の検査は血糖測定とHbA1cが主流ですがGA検査は近い将来さらに活用されていく可能性のある検査です。GA検査は日本では主に血液のヘモグロビンに変動のある状態での血糖コントロールの治療の良し悪しを判定するのに利用されています。たとえば妊娠後期にはGA値15.8%未満を目指すとか、血液透析患者さんでは20%未満を管理目標とするとかです。また直近2週間の血糖の状態を反映する検査のため、治療開始直後や治療内容変更直後の効果判定には有用です。この新しい血糖管理指標としてGA検査は症例や病態によってはHbA1cに比べてより血糖状態を正確に反映するとの報告が増えてきたことから、ある大規模試験をGA検査によって再度解析できないかどうかの検討がなされました。GA検査による再解析で新たな知見が得られる可能性もあり、今後の研究が待たれています。


グリコアルブミン 検査は糖尿病の診断のスクリーニング検査としても有用です

 日本糖尿病学会の糖尿病の診断基準には採用されていませんが、糖尿病のスクリーニング検査(いわゆる"ひっかけ検査"。疑わしいものを全部拾い上げ、その中から本当に陽性のものを絞り込む戦略で、第一段階の検査をスクリーニング検査という)として有用と言われています。


献血で糖尿病関連検査が受けられます。

 赤十字血液センターでは、献血にご協力いただいた方全員に、健康管理に有用な血液検査サービスを行っていますが、2009年3月より、糖尿病関連検査のグリコアルブミン検査 (GA検査)が追加されました。糖尿病患者さんが増加しつつあるにも関わらず、現在の公的な健診制度は対象が40歳以上に限定されることが多く、若い人は糖尿病などの血液検査の機会が限られています。一方献血には多くの若い人も協力していただけるため、そういった人たちの中の糖尿病や糖尿病予備群が早期に発見されることを期待して検査サービスに追加導入されました。血液センターではGA値15.6%未満を標準値、15.6%以上16.5%未満を正常高値(注意が必要=糖尿病予備群)、16.5%以上18.3未満を境界域(要保健指導=糖尿病予備群)18.3%以上を糖尿病域(受診推奨=糖尿病の可能性あり)とし、16.5%以上の方に受診を勧めています。

表 1  グリコアルブミン及びHbA1cの標準値
検査項目正常域境界域
(保健指導)
糖尿病域
(受診推奨)
正常高値(保健指導)
HbA1cJDC<5.2%未満5.2%≦ <5.5%5.5%≦ <6.1%6.1%≦
NGSP<5.6%未満56%≦ <5.9%5.9%≦ <6.5%6.5%≦
グリコアルブミン<15.615.6%≦ <16.5%16.5%≦ <18.3%18.3%≦

注:グリコアルブミン標準値は血液センター独自の基準です

献血可能な健常人でも境界型糖尿病〜糖尿病が疑われる人が40人に一人

 2009年4月1か月間の全国の献血者414,909人のGA値は男女とも年代が上がるに従い,GA値16.5%以上の人の割合が増加しています一般に健康であると考えられる献血者集団でもGA値16.5%以上の人が全体の2.4%(およそ40人に一人存在することが分かりました。GA値16.5%以上の群では,普通体重・低体重が約6割を占め,普通体重以下でかつ献血可能な健常人でも境界型糖尿病が疑われる人が多く存在することが明らかとなりました。糖尿病は早く見つけて、より早く予防に努める事、より早期にしっかりした治療を受ける事がその後の糖尿病の合併症の発症・進展予防に重要と言われています。献血は糖尿病・糖尿病予備群の早期発見に大いに活用できるものと思われます。

(図 1)
(献血者集団におけるグリコアルブミン値の解析 糖尿病 54巻5号 337〜343、2011)


女性では妊娠糖尿病予備群以上の方が4%〜8%、痩せていても注意が必要

 若年女性献血者の内妊娠糖尿病予備群とも考えられるGA値15.6%以上の方や糖尿病の疑いのあるGA値16.5%以上の方が散見されています。特に問題なのは低体重の方にも妊娠糖尿病予備群とも考えられる方おられます。肥満の人ほど糖尿病になりやすいという認識は一般的ですが、痩せている人にも注意が必要です。

(図 2)
(福井県赤十字血液センター 2011年)


献血時には糖尿病以外の検査もしています

 糖尿病関連検査以外にも献血では脂肪肝やアルコール性肝障害、高コレステロール血症、もちろん血圧測定や、貧血の検査もあります。献血時の検査を活用して、もし異常があれば適切な生活習慣を続ける事で健康管理に役立てていただけると大変有り難いです。しかし、肝炎やHIVなどの感染が心配な方については感染直後には検査ではチェックできない期間がありますので、輸血を受ける患者さんの立場に立って、感染症の検査目的の献血だけは絶対に避けていただけますようお願い致します。


<参考>

血糖コントロールの目標 日本糖尿病学会
目標 血糖正常化を
目指す際の目標
合併症予防
のための目標
治療強化が
困難な際の目標
HbA1c(%)
(NGSP)
6.0未満 7.0未満 8.0未満
       
GA(%) 16.8未満 19.8未満 22.8未満

GA(%)の目標値はHbA1c(JDS)×3から算出したものであり日本糖尿病学会で決められたものではありません


健診データしっとくナビ
ページTOP
878