ピロリ菌のこと

 従来、胃の中には細菌はいないものと考えられていました。それは胃の中は胃酸があるために普通の細菌は生息できないものと考えられていたからです。1983年にオ−ストラリアの科学者が、胃粘膜に細菌が感染している事を報告しました。のちにこの細菌はその特徴から“ヘリコバクタ− ピロリ”(以後ピロリ菌)と名付けられました。

 この発見は胃、十二指腸の疾患を考える上で大きなインパクトを与えました。潰瘍の患者さんの胃粘膜を調べると、多くの人にこのピロリ菌がみつかります。この菌が出す物質が胃、十二指腸粘膜の障害に関係し、特に潰瘍が再発しやすい人ではこの菌の関与が大きいと言われています。事実治療により除菌(菌を殺しなくすこと)に成功すると再発しないとも言われています。また慢性胃炎の発症、さらには胃がんとも関連があるようです。このような菌がどのようにして人の胃に住み着いたかは明らかではありませんが、今のところ経口感染が考えられています。日本では40才以上の方に保有率が高いと言われています。ただ保有しているからと言って、必ずしも病気になる訳ではありません。またこれらの疾患の原因のすべてがピロリ菌といった訳でもありません。今後いろいろな事がわかってくると思います。

 ピロリ菌の診断は内視鏡時に採取した組織を用い“培養”、“組織診断”、“ウレア−ゼテスト(化学反応)”とか、“尿素呼気試験”といって特殊な試薬を飲んで呼気中にでた物質を測定し判定する方法、さらには“血液検査”などで行われます。治療は細菌感染なので抗生物質と抗潰瘍薬の併用で行われます。ただ、現在のところはこれらの検査、治療は保険適用が認められていませんので、一般の医療機関では難しいかも知れません。近い将来保険適用が認められることが期待されます。

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