第36回石川県医師会創立記念祭

会長 祝辞

    本日、ここに平成17年度石川県医師会創立記念祭の式典を開催するにあたり一言ご挨拶を申し上げます。

    石川県医師会は、明治40年7月に発会してから98周年を迎え、また昭和22年の法改正により同年11月に社団法人となってからでは57周年、更に大手町に医師会館が建設されたのを契機に始められた創立記念祭も、鞍月町に移転しての2年を加えて、本年は第36回を迎える事となりました。

    こうした記念祭に、公私にわたって大変お忙しい中を、日本医師会から会長代理として宮崎副会長、谷本石川県知事、山出金沢市長代理として須野原助役、沓掛参議院議員を始めとして、多数のご来賓各位のご臨席を賜りましたことに対し、衷心より深く感謝申し上げます。

    本記念祭は、会員の融和を図ると共に時局の認識を新たにし、本会の益々の発展を目的として開催しておりますが、加えて地域医療に貢献されること30年以上の会員及び勤務成績優秀な長期医療従事者に対する表彰並びに叙勲の受章者と満80歳に達せられた長寿会員の方々に対するお祝いを申し上げる事としております。本日表彰或いは慶祝申し上げます各位のご功績に対しまして、心から敬意と謝意を表するものであります。

    また、本席では毎年石川県の表彰要綱に基づきまして、医療功労者に知事表彰を頂いておりますが、本年は8名の会員が名誉ある知事表彰を受賞される事になりました。ここに谷本石川県知事に対しまして厚く御礼申し上げます。

    さて、医療を取り巻く環境は依然として厳しく、国民が期待する景気の踊り場脱却も進展せず、7月12日に発表された政府の月例経済報告は「弱さを脱する動きがみられ緩やかに回復している」となっているものの、一向に止らない原油の高騰や中国を始めとする諸外国との摩擦等各方面に不安材料が見られ、常時適切な医療が提供されるべき患者の方々に、生活不安から受診行動の抑制という翳りが感じられます。

    加えて、政府は国の財政難を理由に、医療の削減のみが目的としか受け取れない公的医療保険の給付範囲の縮小、医療費の伸び率管理などの医療費抑制策を導入しようと躍起になっております。去る6月21日閣議決定された経済財政運営と構造改革に関する基本方針、即ち「骨太の方針2005」に於いて「伸び率管理制度の導入」という字句の盛り込みは、日本医師会を始め国会の厚生労働関係議員のねばり強い接渉の結果、阻止できましたが、財務省はすかさず医療費抑制を予算でコントロールする手法に切替え、「社会保障費の自然増4千億円から5千億円の圧縮」というアドバルーンを報道機関向けに打ち出し、油断も隙も見せられない動きを示しております。

    こうした状況を受け、我々は去る7月9日に開催された第161回石川県医師会臨時代議員会に於て、健康で安心して暮らせる社会実現のため、国民皆保険制度の堅持、医療費の伸び率管理制度反対等4つの項目を掲げた決議を行い、日本の医療に市場経済原理を持ち込もうとする経済財政諮問会議や規制改革・民間開放推進会議の目論みに明確に反対する姿勢を打出したところであります。

    来年3月には2年に1度の診療報酬の改定がありますが、特に介護報酬も同時に改定される事となっており、介護施設に於けるホテルコストが医療保険制度に持ち込まれる事のないよう、診療報酬改定の動向を睨んで反対行動を起こす事も視野におく必要があると考えております。

    石川県医師会の昨年の創立記念祭以降の取組の中で、主要なものについて触れさせて頂きます。

    昨年10月、日本医師会の治験推進研究事業に採択されたと通知がありました。全国から申請の有った22団体中の10団体に石川県医師会が選定されたものであり、新しく開発された薬の有効性や安全性を確認する治験を県内の開業医でも実施できる体制を整える事とし、1月13日に治験審査倫理委員会を設置して治験事業に取り組んでいるところであります。

    また、医師が医療の現場を離れ、県民と同じ目線で語り合う「健康についてみんなで語ろう会」を11月13日四師会共催で開催し、サプリメントの活用法と注意点についての講演や政府の規制改革・民間開放推進会議が日本の医療に持ち込もうとしている混合診療や株式会社の参入が、患者の方々にどのような問題を引き起こすことになるのかを役員の先生を始め医療関係団体の皆さんが役者となってコントで演じ、テレビや新聞に大きく報道され、その活動に注目を頂きました。

    幸いにも混合診療の解禁は、日本医師会の「国民皆保険制度を守る署名運動」の展開により、約6百万名にのぼる署名を頂き阻止出来ました。本県に於いても会員諸先生のご協力を頂き緑色のいのちのリボンの着用という独自のアピールやポスターの掲示により、4万4千名余りの方々の署名を集め、本県選出の全ての自由民主党国会議員の先生に請願の紹介議員になって頂き、衆・参両院の本会議で全会一致の請願採択という成果をあげる事が出来ました。その際は関連各団体の皆様にもご理解とご協力を頂き署名集めや石川県医療推進協議会の設立総会へのご出席を賜りました事に対し厚くお礼申し上げます。

    次に、石川県医師会臨床検査センターが入っている東山の石川県医師会第二会館の新築移転についてであります。現在の第二会館は建築後50年を経過しており、老朽化によりこれ以上の使用に耐えられない事から、現在地に於ける改修を含めた検討が進められた結果、本年2月6日の第159回臨時代議員会で金沢市問屋町1丁目に新しく移転用地を取得する事の承認が得られました。その後、臨床検査センターの経営会議や運営委員会、将来計画検討委員会、ワーキンググループ会議等で十数回の検討を経、近く開催される代議員会でご承認を頂くことになっています。切り詰めた財源計画により、臨床検査センターの運営の中で収支を賄っていく所存でありますので、会員の皆様方に臨床検査センターの利用の拡大を心からお願い申し上げる次第であります。

    医師の確保については、平成16年度までドクターバンク事業に石川県の助成を受けて取り組んで参りましたが、補助事業の廃止により本年度から石川県医師会の単独事業として取り組む事と致しました。7月13日には金沢大学医学部長並びに石川県健康福祉部医療対策課長にも出席願い、卒後臨床研修連絡委員会を開催し、石川県に於ける医師の適正配置について協議したところであります。

    また、金沢大学医学部附属病院、金沢医科大学病院、石川県立中央病院に於ける新任研修医オリエンテーションに出席し、医師会の説明と医療が置かれている現況、本年度から日本医師会に創設された研修医を対象とする医師賠償責任保険制度についてお話しし、入会の勧誘も行なって参りました。

    平成の大合併と言われる市町村合併に伴い、本県の郡市医師会は11から9に二つ減少し、歴史ある四つの郡市医師会が再編され、新生の能登北部医師会と七尾市医師会がスタート致しました。行政区域の拡大により地域住民の医療と健康の増進に一層のご尽力を賜りますようお願い申し上げます。

    また、本年4月1日から個人情報保護法が全面施行された事により、先生方や患者さん等多くの情報を取り扱うものとして、石川県医師会個人情報保護規程や個人情報保護方針、個人情報保護管理体制を整備し、情報管理に遺漏のないように取り組む事と致しました。

    一部会員による不祥事や不正行為等の発生は、医療に対する県民の不信を募らせる事から、近く日本医師会が発行する自浄作用活性化に向けてのハンドブックを活用し、医学知識や医療技術だけでなく、医師としての資質と倫理に関する課題も含めた生涯教育や最近増加傾向が見られる医事紛争に関し、医療事故の防止と再発防止に努める事としております。

    その他、医師の団体として、医政に関する認識を高めるため、8月27日に武見・西島両参議院議員をお迎えして医療政策懇談会を開催する事としている他、医師会に対する認識を深めてもらうため、石川県議会議員との意見交換会や医療担当記者連絡会の開催も予定しております。

    行政との連携については、石川県健康福祉部長以下関係課長と月1回のペースで打合せ会を持ち、県民の医療や健康に係る諸案件について意見の交換を行い、問題の事前解決に努めている他、石川社会保険事務局とは保険医療機関の指導等についての連絡会を持つと共に情報の交換を行い、また石川労働局等国の機関との連携についても留意しているところであります。

    医師会関係の医師信用組合、医師協同組合、アイエム商会、医療在宅ケア事業団にあっても着実な事業運営がなされておりますが、会員の皆様方のより一層のご利用をお願い申し上げます。

    以上、主要な事業の一端について申し上げましたが、会員の皆様方のご理解とご協力によりまして、お陰様で会務は順調に運営されております。ここに改めて厚くお礼申し上げます。

    最後になりましたが、会員の皆様におかれましては、厳しい医療環境の中でありますが、県民の健康を守るためより一層の研鑽を積まれると同時に、医師としての倫理の向上に努められるよう切にお願い申し上げます。

    本日表彰されます会員、医療従事者各位並びにご来賓の方々のご健勝とご多幸、更に益々のご活躍をご祈念申し上げまして式辞と致します。

    平成17年7月31日

    石川県医師会 会長 梅田 俊彦

被表彰者

    会員の部

    医療従事者表彰の部(348名)

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