石川県医師会創立102周年記念祭

会長 祝辞

     本年4月にメキシコ、アメリカの一部において発生した新型インフルエンザは、瞬く間に世界中にまん延し、世界保健機関(WHO)では6月12日に警戒レベルを「フェーズ5」から、世界的大流行(パンデミック)を意味する「フェーズ6」に引き上げたところである。

     国内においても、5月9日に兵庫県で国内初の感染者が確認されて以来、現在、全ての都道府県で、合わせて5,000名を超える感染者が確認されている。また、県内でも、6月28日に初めて3名の感染者が確認されて以来、これまでに91名となっている。

     今後、医療機関の負担を可能な限り減らし、重症患者に対する適切な医療を提供する観点から、これまでの発熱外来での診療を原則一般医療機関においても行うこととしたところである。

     さて、医療を取り巻く環境は相変わらず極めて厳しいものがある。財政偏重の医療費削減を目的とする、国民不在の医療制度改革と市場原理の導入によって、世界に冠たる国民皆保険制度が崩壊の危機に瀕し、医療現場の疲弊は限界に達した感がある。国民の間では受ける医療の格差が拡大することへの不安が高まってきており、どこでも誰もが安心して医療を受けることができる医療環境の整備が喫緊の課題となっている。

     こうした中で、先般、閣議決定をされた「経済財政改革の基本方針2009」いわゆる「骨太の方針2006」から始まった社会保障費の自然増分の毎年2,200億円の機械的削減については、医療現場の疲弊が限界に達していることなどを踏まえ、これ以上の削減は無理であるということから、来年度からは自然増分はそのまま認めるということで決着されたところである。この事により、次回の診療報酬改定では、マイナス改定は事実上なくなったものと考えている。

     また、レセプトオンライン請求完全義務化については、完全義務化を撤廃すべく働きかけを行なってきた結果、平成19年度の閣議決定では、例外なく完全な義務化であった規定が、例外を認める方針へと改定をされたところである。

     国際的に見た日本の医療の現状は、「OECD(経済協力開発機構)ヘルスデータ2008」によれば、人口1,000人当たりの医師数は2.1人で、OECD 平均の3.1人を大きく下回り、主要7か国では最下位となっている。また、GDP に占める総医療費でも8.2%と、主要国では最下位であり、我が国の医療環境は、まだまだ低い水準であると考えざるを得ない。

     少し明るい兆しが見えてきたものの、これまでの医療費の抑制に加え、研修医の都市部への集中、勤務医の過重労働、看護基準の改正などにより、地域における医師・看護師の不足、偏在化が急激に進行しており、医療を取り巻く環境にまだまだ厳しいものがあることはご承知の通りである。

     こうした状況の中で、石川県医師会としては、県民の安心と健康を守るために、今後とも医療費抑制政策などに厳しく対峙するとともに、問題・課題に一つひとつ丁寧に対応し、一つでも多く明るい展望を示さなければならないと考えている。

     このため本年度は、まず安全・危機管理対策として、県立中央病院のご協力を得つつ、死因究明システムに新たにAi(Autopsy imaging)を導入し、より一層の推進を図ることとしている。

     医療制度改革対策としては、医療、福祉を取り巻く厳しい環境の中で、新たに若手医師を中心とした「医療政策調査研究機構」を設置し、医療問題に関する調査・研究を行うとともに新しい施策の立案などを行うこととしている。

     勤務医対策としては、平成20年3月の「勤務医基本問題検討委員会」の答申を踏まえ、新たに「勤務医支援総合対策委員会」を設置し、勤務医の勤務環境の改善を図るための検討を進めるとともに、大学医学部との連携を強化するため、「大学医学部連絡会」を設置することとしている。

     また、金沢大学の医学生を対象に、地域医療の実態と医師会活動などについての理解を深めて頂くため、特別講義を行なってきたところである。

     女性医師対策では、新たに、女性医師が出産・育児等で離職せず、引き続き勤務を続けられるよう総合的な相談窓口として、県医師会内に「女性医師支援センター」を設置し、メンターの委嘱、情報の提供などを行うこととしている。

     さらに広報活動では、新たに医療や医師会活動の現状を広く県民に広報し、理解を深めて頂くため、定期的に記者会見を開催し、積極的に情報を提供して行きたいと考えている。

     県民の方々が日頃医療に対して持っていらっしゃる思いをお聞きし、語り合うことを通して、より一層県民、患者の視点に立った医療を推進するため、公募したモニターなどによる「メデイバタ会議」を引き続き開催することとしている他、県民とともにという視点から始めた「健康について、みんなで語ろう会」も本年で7回目を数えることになっている。

     医療倫理の確立や医療安全の取り組みについては、法に則り適正に対処することは当然であり、医の倫理の高揚により一層努めていくこととしている。

     最後に、医師・看護師不足や新型インフルエンザ対策など、会員の皆様におかれましては、大変厳しい医療環境の中ではあるが、県民の健康を守るため、医療を提供するものの高い使命感のもと、県民の皆様の目線で安全な医療の提供に努められるようお願いを申し上げるとともに、本日表彰されます会員、医療従事者各位並びにご列席のご来賓の方々のご健康とご多幸、益々のご活躍をご祈念申し上げて式辞とする。

    平成21年7月26日

    石川県医師会 会長 小森 貴

被表彰者

    会員の部

        (年齢順)
         郡市医師会 氏名医療施設名
         能登北部医師会  波佐谷 兼綱  珠洲市総合病院 
         加賀市医師会  前野 紘一  加賀市民病院 
         河北郡市医師会  茶谷 隆  茶谷医院 
         能美市医師会  徳久 芳樹  医療法人徳久会徳久医院 
         能登北部医師会  横井 克己  公立穴水総合病院 
        (年齢順)
        郡市医師会氏名勲  等受章年月日
         金沢市医師会  山口 成良  瑞宝中綬章  平成20年11月3日 
         金沢市医師会  川北 篤  旭日双光章  平成21年4月29日 
         白山ののいち医師会  筑田 正志  瑞宝双光章  平成21年4月29日 

    医療従事者表彰の部(357名)

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